子どもの頃に川や海へ家族で出かけ、魚釣りや潮干狩り、水泳を楽しんだ経験や地域のお祭りで神輿を担いだ経験、友だちとままごとやヒーローごっこをした経験があるのではないでしょうか。平成22年に国立青少年教育振興機構が、小学5,6年生、中学2年生、高校2年生の合計11,014 人、20 代~60 代5,000人(各年代男女各 500 名)を対象に子どもの頃の体験と大人になった時の資質や能力との関係性を調べるアンケート調査を行いました。
その結果、子どもの頃に自然体験や友だちとの遊び、地域活動等、様々な経験をした大人ほど、やる気や生きがいを持っている人が多く、経験したことのないことには何でもチャレンジしたいと回答した意欲的な人の割合が高い傾向があり、高収入・高学歴・結婚している割合も高い傾向がありました。
結果① 子どもの頃の体験が豊富な大人ほど,やる気や生きがいを持っている人が多い。 ■子どもの頃の「自然体験」や「友だちとの遊び」,「地域活動」等の体験が豊富な人ほど,「経験した ことのないことには何でもチャレンジしてみたい」といった「意欲・関心」や,「電車やバスに乗ったと きお年寄りや身体の不自由な人には席をゆずろうと思う」といった「規範意識」,「友だちに相談されることがよくある」といった「人間関係能力」が高い (p.1 )。 ■子どもの頃の体験が豊富な人ほど,最終学歴が「大学や大学院」と回答した割合が高く,その他, 現在の年収が高かったり,1ヶ月に読む本の冊数が多くなる,結婚している,子どもの数が多い,という 割合が高い傾向がみられる(p.2-3 )。
この研究における自然体験とは
アンケート項目には川や海で泳ぐことや魚釣り、貝を採ること、清流の水を飲んだことがあるかなどが書かれています。自然体験とは人の手が加えられていない自然の中で自然を活用した行動をすることであると考えられます。自然体験のイベントに参加したり、ツアーに参加したりすることでも体験できますが、ご家庭でも日の出を観察することや、星や月の観察をすること、川や海で泳いだり、生物を捕ったりすることは可能だと思います。庭や公園で図鑑を片手に生物を探すことや山でキャンプをすることでも体験ができます。
この研究における友だちと遊ぶこととは
アンケート項目には友だちとケンカをしたことがあるか、友だち同士のケンカを注意、やめさせたことがあるか、ヒーローごっこやおままごとをしたことがあるかなどが書かれています。友だちと遊ぶこととは、表面上の付き合いだけでなくぶつかり合いも含めた深い付き合いすることであると考えられます。
この研究における地域活動とは
アンケート項目には近所の小さな子と遊んであげたことがあるか。近所の人に叱られたことがあるか。お祭りに参加したことがあるかなどが書かれています。地域活動とは家族・学校外のコミュニティとの関わりを指していると考えられます。習い事や地域の行事、近所付き合いを通して体験することができます。
自然体験や友だちと遊ぶこと、地域活動に共通すること
この3つに共通する体験は自分以外の価値観や概念を認知し、受け入れる体験であると考えられます。
子どもの頃の体験と成長してからの意欲・関心、規範意識、人間関係力との関係の考察
海や山はとても広く、人の手では動かせないような大きな岩や知らなかった生き物に出会えます。友だちと深い付き合いをすると自分とは好みや考えたが違うことを知ります。学校や家族以外の異年齢の人と関わることで、教育的配慮のない人間関係や考え方を知ることができます。こうした未知の価値観と触れ合う体験が、意欲や関心を高め、知らないことを知りたいという欲求を生むのではないでしょうか。様々な価値観を持った人がいることを理解し、尊重するからこそ、規範意識や人間関係力の高い人間になるのではないでしょうか。小さなコミュニティで、少ない評価基準で物事を判断していたら、視野も狭く、包容力もなくなってしまいますよね。会社勤めをしている方は共感していただけると思います。
まとめ
子どもの頃の体験と大人になった時の資質と能力の関係性についてはこの他にも様々な結果が出ています。興味がありましたらぜひ引用元の報告書を読んでみてください。この報告書はアンケート結果のまとめであり、子どもの頃に○○体験をすれば必ず△△な資質・能力が身につくというものではありません。あくまで関係性を数値で示しただけです。ご注意ください。引き続き、ブログ記事はお客様のご相談内容に沿った形で記事にしていきます。
最後にこの報告書をまとめた千葉大学教育学部教授(研究会座長) 明石 要一さんの言葉を引用します。
子どもの頃のどの時期にどんな体験をすれば効果的か
子どもの頃の体験と大人になってからの体験の力の結びつきを調べた結果,次のことがわかった。
・小学校低学年までは「友だちとの遊び」と「動植物とのかかわり」が体験の力に関係している。
・小学校高学年から中学生までは「地域活動」,「家族行事」,「家事手伝い」等が体験の力に関係している。
「体験」はいつでも効果的とは限らない。子どもの成長に合わせた「体験活動」があるようだ。
今後はこの知見を踏まえた体験活動の提供が求められる。「卒啄(そったく)の時」という諺がある。雛が内から殻を破ろうとする鳴き声に答えて親が外から殻をつついてあげる,という意味である。ベストチャンスがあるのである。
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